ご家族が亡くなってしまった際の財産調査について,ご相談を受けることが何件かありましたので,せっかくなので,少しまとめてみたいと思います。
ご本人がお亡くなりになってから(以下,亡くなったご本人を「被相続人」といいます。),被相続人の遺産を受け継ぐご親族(以下,「相続人」といいます。)の選択肢としては,第1に,プラスの財産もマイナスの財産も受け継ぐといって相続するか,第2に,プラスの財産もマイナスの財産も要らないといって相続放棄するか,大きく分けて2つの方法があります。(このブログでは,限定承認の方法は説明の便宜上一旦置いておきます。)
相続人の方はご本人が亡くなってから,原則として3ヶ月の間に被相続人のプラスの財産,マイナスの財産(負債)の有無を調査して,相続するかしないかを決めます。
では,財産の調査は通常どのように行うのでしょうか。
まず,負債については,①被相続人の通帳を開いて返済と思しき引き落としや送金がないか確認する,②被相続人のお財布を開いてクレジットカード類をチェックする,③金融機関や消費者金融などからの通知が届いていないかをチェックします。また,ご本人が不動産をお持ちの際には,④登記事項証明書を取得して,抵当権がついていないか等を確認します。多数の負債の存在が伺われる場合には,⑤信用情報機関(CIC,JICC,全国銀行協会)に照会をかけるのも方法の一つです。
また,被相続人が個人事業主の場合,事業用の負債は,確定申告書に記載されている場合があるので⑥確定申告書のチェックも必要です。なお,被相続人が確定申告書の控えを紛失してしまっている場合には,税務署で閲覧手続を行う事が考えられます。
被相続人が個人から借入れをしている場合には,調査が難航します。⑦消費貸借契約書等が発見できれば問題ありません。契約書が無い場合には⑧通帳の送金履歴や被相続人と債権者とのやりとり(手紙,メール等)をたどるしか手がかりがありません。そのため,ずいぶんと長いこと返済していない,債権者と連絡を取り合っていないというような場合には,調査の漏れが生じてしまう可能性が高くなってしまいます。調査の漏れがありうるので,被相続人が亡くなって時間が経ってから突然,債権者と名乗る被相続人の友人が現れて・・・ということが起こりうる訳です。
反対に,プラスの財産はどのように調査を行うのでしょうか。プラスの財産の調査は負債の調査より難しくなっていきます。次回は,プラスの財産の調査の難しさについてお伝えしたいと思います。
(弁護士 森美奈子)