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祭祀承継者の決定方法


2017.10.02遺言・相続


相続の事案を扱っている際に,相続人の間で,祭祀承継者(系譜,祭具及び墳墓などの祭祀財産を承継し管理する者)が決まらないケースがあります。
※系譜:歴代の家長を中心に先祖以来の系統(家系)を表示するもの(家系図や過去帳等)
※祭具:祖先の祭祀,礼拝の用に供されるもの(位牌,仏壇,仏具,神棚等)
※墳墓:遺体や遺骨を葬っている設備(墓石,墓碑,埋棺など)

 

祭祀承継者の決定方法については,民法897条に規定があります。
まず,①被相続人の明示又は黙示の指定によります。遺言,書面,口頭でもいいです。
被相続人の指定がない場合は,②慣習によります。この慣習は,戦前の旧民法の慣習ではなく,新民法の施行後新たに育成されてきた慣習を意味するとされます。
なお,相続人全員が協議して承継者を指定することも,規定自体はなく,裁判例も分かれている面はありますが,認められると思われます。
慣習も明らかでない場合は,③家庭裁判所が定めることになります。

 

最後の③家庭裁判所の指定についてですが,相続人などの利害関係人が家庭裁判所に調停又は審判を申し立て,祭祀承継者の指定を求めることになります。必ずしも調停を先にする必要はありません。

 

家庭裁判所による指定の基準ですが,
A 承継者と相続人の身分関係
B 過去の生活関係及び生活感情の緊密度
C 承継者の祭祀主宰の意思や能力
D 利害関係人の意見
等諸般の事情を総合して,被相続人が生存していれば,おそらく指定したであろう者が誰でであるかで判断されるようです。

 

なお,祭祀承継者の指定がなされた場合には,承継の放棄や辞退をすることはできませんが,祭祀を主宰する義務を負うわけではありません(東京高裁昭和28年9月4日決定)。
また,相続放棄をした人でも,相続人でない人でも祭祀承継者になることができます。

(弁護士 若狹 美道)