以前,配偶者居住権の概要についてお話ししました。
本日は,配偶者居住権の評価方法についてお話しします。
配偶者が遺産分割において配偶者居住権を取得する場合には,その財産的価値に相当する金額を取得することになりますので,その価値に相当する分だけ,他の遺産からの取り分が減ることになります。
配偶者居住権の価額や居住建物の価額をどのように評価するかについては,今後の解釈・実務運用に委ねられています。
その評価方法の一つとして考えられているのは,「還元方式」と呼ばれる方法です。
配偶者居住権の経済的利益に着目する方法であり,配偶者居住権の存続期間中に配偶者が受けられる経済的利益の現在価値の総和を求めるもので,次のような算式がとられます。
配偶者居住権の価額
=(正常賃料相当額-必要費)×年金現価率(期間・利率)
しかし,この方式には,次のような問題点があるとされています。
ⅰ そもそも市場賃料を把握することが困難。客観的信頼性に問題あり。
ⅱ 専門家でない者には計算が困難。
ⅲ 不動産鑑定士の資格を持つ調停委員が意見を言う必要が出てくるが,普遍的ではない。
これに対して,「簡易な評価方法」という方法があります。
これは,居住建物及びその敷地の価額から配偶者居住権の負担付きの各所有権の価額を引いた額とする方法です。
配偶者居住権の価額
=建物・敷地の現在価額-配偶者居住権付所有権の価額
この場合,「配偶者居住権付所有権の価額」をいかに産出するかが問題となりますが,「配偶者居住権付所有権」には,①負担付建物所有権の価額と②負担付土地所有権が含まれます。
①負担付建物所有権の価額
次の計算式により算出します(計算結果がマイナスとなる場合には,0円)。
=固定資産税評価額×(法定耐用年数-〔経過年数+存続年数〕)÷(法定耐用年数-経過年数)×ライプニッツ係数
②負担付土地所有権
次の計算式により算出します。
=敷地の固定資産税評価額又は時価×ライプニッツ係数
算出の具体例は次の機会にお話ししたいと思います。
(弁護士 若狹 美道)