取締役の報酬等(報酬,賞与その他職務執行の対価である財産上の利益)に関する以下の事項については,定款に記載する方法により定めるか,株主総会の決議により定める必要があります(会社法第361条第1項)。
① 報酬等のうち額が確定したものについては,その額
② 報酬等のうち額が確定していないものについては,その具体的な算定方法
③ 報酬等のうち金銭でないものについては,その具体的な内容
もっとも,定款または株主総会決議においては,全取締役へ支給する総額(最高限度額)を定めれば足り,各取締役の具体的な報酬額についてまで定める必要はありません。各取締役の具体的な報酬額の決定については,実務上,代表取締役に一任されることが多いと思われます。
また,使用人兼務取締役については,使用人として受ける給与の体系が明確に確立されており,かつ,使用人として受ける給与がそれによって支給されているのであれば,使用人としての給与額についてまで株主総会決議等で定める必要はありません(最判昭和60年3月26日)。ただし,株主総会決議において使用人兼務取締役の報酬額を定める際には,当該取締役の報酬額に使用人としての職務執行の対価が含まないことを明らかにしておく必要がありますのでご留意ください。
(弁護士 井原 淳)