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有責配偶者からの婚姻費用分担請求②


2017.05.31離婚


本年4月19日の記事(有責配偶者からの婚姻費用分担請求①)の続きです。

 

前回は,養育費相当額だけでなく,配偶者の最低生活維持費も認めた判決をご紹介しました。

 

↓こちらの決定は本決定同様,養育費相当額のみを認めています。

 

(東京高裁昭和58年12月16日決定)
「民法760条,752条に照らせば,婚姻が事実上破綻して別居生活に入つたとしても,離婚しないかぎりは夫婦は互に婚姻費用分担の義務があるというべきであるが,夫婦の一方が他方の意思に反して別居を強行し,その後同居の要請にも全く耳を藉さず,かつみずから同居生活回復のための真摯な努力を全く行わず,そのために別居生活が継続し,しかも右別居をやむを得ないとするような事情が認められない場合には,前記各法条の趣旨に照らしても,少なくとも自分自身の生活費にあたる分についての婚姻費用分担請求は権利の濫用として許されず,ただ,同居の未成年の子の実質的監護費用を婚姻費用の分担として請求しうるにとどまるというべきである。そして,右認定事実によれば,相手方は抗告人の意思に反して別居を強行し,その後の抗告人の再三の話合いの要請にも全く応ぜず,かつみずからは全く同居生活回復の努力を行わず,しかも右別居についてやむを得ない事情があるとは到底いいがたい状態で10年以上経過してから本件婚姻費用分担の申立をしたものと評価すべきであるから,自己の生活費を婚姻費用の分担として抗告人に請求するのは,まさに権利の濫用であつて許されず,ただ相手方と同居する長女敦子,二女知子の実質的監護費用だけを婚姻費用の分担として抗告人に請求しうるにとどまるというべきである。」

 

↓こちらの決定は,一切の請求を認めていません(未成年者がいる場合に養育費相当額を認める趣旨かどうかは不明です。)

 

(福岡高裁宮崎支部平成17年3月15日決定)
「相手方は,Fと不貞に及び,これを維持継続したことにより本件婚姻関係が破綻したものというべきであり,これにつき相手方は,有責配偶者であり,その相手方から婚姻関係が破綻したものとして抗告人に対して離婚訴訟を提起して離婚を求めるということは,一組の男女の永続的な精神的,経済的及び性的な紐帯である婚姻共同生活体が崩壊し,最早,夫婦間の具体的同居協力扶助の義務が喪失したことを自認することに他ならないのであるから,このような相手方から抗告人に対して,婚姻費用の分担を求めることは信義則に照らして許されないものと解するのが相当である。」

 

(続く)

 

(弁護士 若狹 美道)