本年5月31日の記事(有責配偶者からの婚姻費用分担請求②)の続きです。
前回は,養育費相当額を認めた判決,一切の請求を認めなかった判決(未成年者がいる場合に養育費相当額を認めるか否かは不明)をご紹介しました。
↓こちらの決定も,養育費相当額のみを認めています。
(東京家庭裁判所平成20年7月31日審判)。
「別居の原因は主として申立人である妻の不貞行為にあるというベきところ,申立人は別居を強行し別居生活が継続しているのであって,このような場合にあっては,申立人は,自身の生活費に当たる分の婚姻費用分担請求は権利の濫用として許されず,ただ同居の未成年の子の実質的監護費用を婚姻費用の分担として請求しうるにとどまるものと解するのが相当である。」
今回の大阪高裁のケース(大阪高裁平成28年3月17日決定【判例時報2321号36頁】)では,奥さんと男性の間のソーシャルネットワークサービスのやりとりに関し,第一審の裁判所はこのやりとりから不貞関係にあったものとは認められないとしたようですが,大阪高裁では「不貞関係にあったことが十分推認される」としています。
奥さんと男性のやりとりの内容が明らかでないため,事実認定の論評はできませんが,同じメールであっても,裁判官ごとにその評価が分かれているという点は興味深いですね。
ただ,婚姻費用分担の審判においては,当面必要な生活費を簡易迅速に定めることが求められていますので,不貞について精密に審理して判断を下すと必然的に裁判が遅れることになるので,時間をかけることは相当でないと考えられているようです(なお,実際の審判においては,事実上ある程度の金額を毎月払わせているケースが多いと思います。)。
(弁護士 若狹美道)