最近受ける労働相談で意外に多いものは,会社が労働者に対して損害賠償請求をしてきたというものです。わかりやすい例を挙げれば,「労働者が会社のお金を横領した。」といった犯罪行為です。このような場合には,労働者は賠償責任を負うべきでしょう。
では,仕事上のミスにより会社に与えた損害について,労働者はその全てを賠償する必要があるのでしょうか?
裁判例上は,会社は労働者の労働によって経済的利益を得ているという観点から,会社による損害賠償請求を否定したり,一定限度において軽減したりする傾向にあります。
すると,「どのような場合に,どの程度軽減されるのか?」という疑問が生じてくると思いますが,これはケースバイケースの判断になりますので,一概に結論は出せません。労働相談を受けている弁護士としては,細かい事情を聴いていく中で,事案に応じたアドバイスをしています。
つまり,労働者としては,会社から仕事上のミスを理由に損害賠償請求をされた場合でも,その場でサインをしたりするなど,即座に賠償に応じたりする必要はなく,弁護士に一度は相談すべきでしょう。
逆に,会社としては,何でもかんでも賠償請求できるわけではないので,やはり請求する前には弁護士に相談した方がいいのではないかと思います。
(弁護士栁川昌也)