ニュースや新聞記事で,「○○事件の弁護団は,××というコメントを発表しました」等と報道されることがあります。この「弁護団」という存在を,みなさんはどのように捉えていらっしゃるでしょうか。
「弁護団」については時折,「依頼者がお金持ちだから,たくさん弁護士を雇ってるんでしょ?」「相手からたくさんお金が取れる事件だから,何人もの弁護士が関わっているんでしょ?」というご質問を受けます。
もしかしたら,中にはそのような案件も存在するのかもしれませんが,残念ながら,多くの「弁護団」は,そのような事情で結成されたものではありません。
弁護団とは,刑事事件においては被疑者・被告人の弁護人の集団,民事事件においては依頼者の代理人となる弁護士の集団を意味します。
普段は単独や少人数で案件を担当することが多い弁護士が,このような集団を結成する理由はただ一つ,「社会正義の実現のため」です。
…と言うと,少し格好つけすぎですね(笑)。
弁護団が結成されるのは,単独や少人数では到底担当しきれない大事件(紛争当事者の人数が多い案件,事案や証拠が多様かつ複雑な案件,国や大企業など相手方が巨大な案件,裁判の長期化が予想される案件 等々)の場合です。このような案件を,弁護士が「大変だから担当できません」と言っては,泣き寝入りの方を増やしてしまうだけです。
ですから,弁護士は,「弁護団」を結成して訴訟活動の負担を弁護士同士で分かち合い,大事件に立ち向かうのです。頭数が増える分,弁護士一人あたりの報酬の割り当ては微々たるものです。裁判所に提出する書面の作成や証拠の分析などに膨大な時間をかけなければならない上,交通費等は弁護士自身の負担になっていたりするので,弁護士の収支がマイナスになることも少なくありません。「割に合わないなぁ」という思いが頭をかすめることがないと言ったら嘘になります。
けれど,「この事件は見過ごせない」「泣き寝入りはさせない」という思いが,弁護団を支えています。その気持ちだけが原動力と言っても過言ではないかもしれません。
当事務所の弁護士も,安愚楽牧場被害対策弁護団をはじめとする多くの弁護団に所属し,活動しています。
今後,報道などで「弁護団」という言葉に出会ったら,「頑張れ!」と思っていただけるとうれしいです。