投資信託における特別分配金というのをご存知でしょうか。
投資信託における分配金には,収益の還元する普通分配金と,運用期間中に収益が発生しない場合でも元本払戻金として分配する特別分配金というのがあります。
投資信託の定義としては,
「一般投資家から集めた資金を,専門の機関が運用し,その運用成果を投資家に配分する制度(デジタル大辞泉)」
「大小さまざまな投資家の資金を集めて一つの基金とし,この基金を専門的な管理者が証券や不動産などに投資運用して利殖を図り,この結果得られた利益を出資口数に応じて投資家に配分するシステム(日本大百科全書)」
「一般の投資家から比較的小口の資金を集めた上で,それを国内外の有価証券,金融商品に投資し,得られた利益を投資家に還元する形態の商品である(ASCII.jpデジタル用語辞典)」
とされており,投資信託における分配金というのは運用利益を分配する普通分配金が原則であると考えられます。
特別分配金というのは,ファンドに組み入れられている株式や債券が値下がりし続けているにも関わらず,身を削って分配を継続するわけですから,決算を経て収益の一部を還元するという本来の姿からかけ離れているといえます。
では,なぜ特別分配金なるものが認められているのでしょうか?
この点については,
「そもそも追加型の株式投信は,『いつでも』『誰でも』購入が可能なもので,金額も投資開始時期も異なる資金を1つにまとめて運用するとなると,収益の分配についてはどうしても不公平が生じてしまう。こうした問題を解消するため,平成12年の税制改正で特別分配金という項目が誕生した。」
などと説明されます。
しかし,金額も投資開始時期も異なるのですから,それぞれに応じた取扱いをするのが本当の平等のような気がします。また,一律な取扱いをする方が,ファンドの運用者側にとっては簡便であるので,このような取扱いをしている感も否めません。
とにかく,この特別分配金の性質(元本の払戻しであること)について,きちんと説明する銀行や証券会社の外務員は非常に少なく,一時期,この点のトラブルが続出しました。特別分配金を含めた分配金が毎月通帳に入っていると,投資経験のない一般人の方は,非常に収益性の高いファンドだと誤解してしまうことは無理もありません。
この点を受け,「平成22年事務年度金融商品取引業者等向け監督方針の改定について」と題する監督指針に基づいて,平成23年11月17日,投資信託協会は「交付目論見書の作成に関する規則」等の一部につき,「毎月分配型及び隔月分配型投資信託においては,分配金が純資産から支払われる旨,収益を超えて支払われる場合がある旨,一部又は全部が元本の一部払戻しに相当する場合がある旨を,イメージ図を用いて記載すること」と改定しています。