平成29年3月10日(金)に名古屋で全国証券問題研究会が開かれ,
一橋大学の角田美穂子教授の「投資信託の販売・勧誘に関する私法上の問題点」と題する基調講演が行われました。
その講演の中で,毎月分配型投資信託の販売における説明義務違反が争われた事案(第一審:東京地判平成26年3月11日判決【金法2015号117頁】,控訴審:東京高判平成27年1月26日判決【金法2015号109頁】)が触れられており,
東京高判の判決は確かに顧客側敗訴判決であるが,
・分配金の由来として運用収益以外のものが含まれていること(本件事実A)
・そのため分配金が分配されていることが必ずしも良好な運用実績を意味しないこと(本件事実B)
上記本件事実ABについて「特にこれまで投資信託を購入した経験がなく,預貯金から資金を移すような顧客においては,勧誘時の具体的なやり取りを通じ,あたかも分配金の分配実績が運用実績を意味するかのような誤解を生じかねない面もある」
として,説明義務の対象となることを肯定している
との指摘がなされておりました。
一見顧客側敗訴判決であっても,非常に有益な判断が含まれていることがある(最高裁判所平成17年7月14日判決も同様です。)ということを改めて気付かされた次第です。