前回のブログでは,養育費の金額を決める際の重要な資料である「算定表」の見方について,夫婦の収入が「給料」である場合(会社員・アルバイトなど)を取り上げて具体的な説明をしました。
今回のブログでは,夫婦のいずれか(もしくは両方)が自営業者の場合について,算定表の見方を詳しく説明します。
これまでのブログにも記載しましたが,算定表で養育費を計算するにあたっては,次のデータが必要です。
(1)子どもの人数,年齢
(2)夫婦それぞれの職業(例:会社員,自営業)
(3)夫婦それぞれの年収(税引き前の支払総額)
また,以下の記事を読む際には,算定表がお手元にあると分かりやすいと思います。
※算定表は,東京家庭裁判所のホームページからダウンロードすることができます(http://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/youikuhi_santei_hyou/)。
夫婦のいずれか(もしくは両方)が自営業者である場合,算定表の「自営」の欄に記載された数字を参照します。
前回のブログにも記載したとおり,養育費を支払うことになる側(離婚後,子どもと離れて暮らすことになる側)が「義務者」,養育費をもらうことになる側(離婚後,子どもと一緒に暮らすことになる側)が「権利者」ですので,算定表の縦軸・横軸に記載された「年収」は,義務者・権利者のそれぞれの年収を当てはめて見ていくことになります。
自営業者の「年収」は,確定申告書の控えを資料にして把握することになります。自営業者の総収入は,確定申告書の「課税される所得金額」であって,売上金額そのものではありません。また,税法上控除されたもののうち,現実に支出されていない費用(例:青色申告控除)については,「課税される所得金額」に加算して総収入を認定することになります。
具体的には,自営業者の総収入は,確定申告書の「所得金額」(確定申告書B表の⑨の金額)から「社会保険料控除」(同表⑫の金額)のみを控除し,「青色申告特別控除」(65万円)を加算して認定することになります。
自営業者の総収入=確定申告書B表の⑨の金額-同表⑫の金額+65万円
※「+65万円」をするのは,青色申告特別控除を受けている場合のみです。
こうして算定表の縦軸・横軸の数字を確定し,そこから表内にたどっていき,交差した点の属する金額帯が養育費の月額の目安となります。
算定表によって簡易計算される養育費の月額は,あくまでも「目安」であるということは,前回のブログでご説明したとおりです。
また,夫婦の一方が自営業者である場合,総収入の正確性(例えば「経費を実際より多く計上して課税対象額を減らしている」等)が問題となることがあります。そういった場合にどのような主張が可能となるかはケースによって異なりますので,詳しくはご相談ください。
次回は,夫婦の一方(もしくは両方)が年金受給者の場合について,算定表の見方を詳しく説明する予定です。
★養育費の算定については,「無職の場合は?」「新算定表って何?」といったテーマについて,連続して取り上げていく予定です。
(弁護士 伊東結子)