『遺品整理屋は見た!』 吉田太一・著(扶桑社文庫,または幻冬舎文庫)
遺品整理屋という特異な会社を営んでいる方のブログをまとめたもの。
孤独死や事件がらみの死を迎えた方の部屋を、ご遺体を含めて片づける。死臭やウジと格闘しながら、死者を悼む気持ちを忘れないなんて、並大抵の人間のできることじゃない。本当に頭が下がる。
人間誰しも「死にたい」と自殺願望に取り憑かれることはあるだろうが、「ここで死んだら、大家さんが大迷惑するかも」なんて思いつきが、実行を押し止めたりすることもあるかもしれない。
その思いつきは当たっている。多くの人が大迷惑する。死はすべてを無くす行為ではなくて、それくらい多くのものを残す行為なのだ。
死が何を残すかということが、淡々と、余すところなく書かれている。
読み進めるうちに、行間から死臭が立ち上る気がしてくるので、食事前には読まない方がいい。