今回は,親権の争い方(手続の流れ)についてご説明します。
前回のブログで,親権を争うことをお考えの場合にお伺いしたい事情として,以下の事柄を挙げました。
*お子さんが生まれてからこれまでの育児の分担状況
*両親などの親族から育児の手助けを受けているか(今後受けることができるか)
*ご夫婦・お子さんの健康状態
*ご夫婦の収入の状況
そして,中でも重要なのは,「お子さんが生まれてからこれまでの育児の分担状況」であり,日常的な衣食住やしつけについて,夫婦のどちらがどのように担当してきたかが家庭裁判所の最大の関心事であると記述しました。
こういった事柄を強調するのは,これまでの育児の分担状況が,親権争いの結果を大きく左右する「家庭裁判所調査官による調査」において特に重視される事柄だからです。
親権が激しく争われるケースでは,裁判外での話し合いや,調停(家庭裁判所内での話し合い)で決着することは難しく,裁判にもつれ込むことが多くなります。
そういった場合,夫婦のどちらを親権者にするかを,裁判官が決めることになります。
裁判官が親権者を決める際に判断の材料にするのが,家庭裁判所調査官による調査の結果です。
調査官とは,児童心理学などの研修を受け,専門的知識に基づいて事案の背景事情などを調査する専門職員のことです。
調査官は,裁判官からの命令を受けて必要な調査を行い,その結果を「調査報告書」にまとめます。
この「調査報告書」には,調査によって分かった事実関係だけでなく,調査官の意見が記されます。
裁判官は,この「調査報告書」の内容を踏まえて,夫婦のどちらを親権者にするかを決めることになるのですが,離婚事案に多く関わる弁護士の実感としては,この「調査報告書」の内容から大きく外れた決定をする裁判官はほとんどいないというのが実情です。
このように,親権が激しく争われるケースにおける手続は,
裁判官による調査命令 → 調査官による調査 → 調査報告書の作成 → 裁判官が調査報告書を参考にして親権を決定(※)
という流れになります。
(※)ケースによっては,裁判官が親権を決定する前に,当事者尋問(夫婦それぞれが家裁に出頭し,法廷で質問に答える手続)を行うことがあります。
少し長くなってきましたので,「調査官による調査って,具体的にどういうことをするの?」という点については,次回のブログでご説明したいと思います。
(弁護士 伊東結子)