前回に引き続き,今回のブログのテーマも「親権の争い方(手続の流れ)について」です。
今回は,前回のブログでは書ききれなかった「家庭裁判所調査官による調査」の具体的な内容をご説明します。
前回のブログでもご説明したとおり,親権が激しく争われるケースにおける手続は,
裁判官による調査命令 → 調査官による調査 → 調査報告書の作成 → 裁判官が調査報告書を参考にして親権を決定(※)
という流れになります。
(※)ケースによっては,裁判官が親権を決定する前に,当事者尋問(夫婦それぞれが家裁に出頭し,法廷で質問に答える手続)を行うことがあります。
この中の「調査官による調査」では,以下のような方法で調査が行われます。
以下の方法を全て実施するということは少なく,ケースに応じて,この中から方法を取捨選択して実施することになります。ケースによっては,下記以外の方法が実施されることもあり得ます。
また,調査官による調査の基礎資料として,あらかじめ,母子手帳や,学校の通知票,幼稚園・保育園の連絡帳などを提出するのが一般的です。
<調査官による調査の方法(例)>
① 調査官が,親権を争っている当事者(父・母)それぞれと個別に面談して,これまでの生活状況などを聴き取る(面談時間は2時間程度です)
② 調査官が,子どもと面談をして,子どもからこれまでの生活状況などを聴き取る(調査官と子どもが面談をする場に,父も母も立ち会うことはできません。面談は,③の家庭訪問調査に合わせて行われることもあれば,裁判所で行う場合もあります)
③ 調査官が,子どもが生活をしている家庭を訪問して,住環境などを確認する
④ (父・母がすでに別居をしている場合)調査官が,子どもを引き取ることを希望している当事者(父または母)の自宅を訪問して,住環境などを確認する
⑤ 調査官が,監護補助者(父・母以外で,子どもの養育をサポートしてくれる人物。例:祖父母)と面談をして,監護補助の状況を聴き取る
⑥ 調査官が,学校や幼稚園・保育園などから,学校などでの様子について聴き取る(調査官が,電話もしくは訪問の方法で聴き取りを行うことになります)
⑦ (別居期間が長くなっている場合など)裁判所の児童室などで,別居している当事者(父または母)と子どもが面会し,その場に調査官が立ち会って,子どもの様子を観察する(いわゆる「試行面会」)
このような調査を経て,調査官は,どちらが親権者になるべきか等の意見を記載した「調査報告書」を作成し,裁判官に提出します。
専門的知識をもつ調査官が,十分な調査を経て作成した報告書は,裁判官の判断に大きな影響を与えることになります。
調査開始から調査報告書ができあがるまでの期間は2ヶ月程度ですが,様々な方法による調査が行われるケース(上記①~⑦の全てを実施するようなケース)では,調査報告書ができあがるまでにさらに時間がかかることもあります。
親権が激しく争われるケースでは,このような調査が行われることもあり,離婚訴訟が長期化することになります。
次回のブログでは,養育費の決め方や金額の争い方について説明をする予定です。
(弁護士 伊東結子)